2009年4月17日金曜日

10万キロ以上乗らなければ効果なし

●10万キロ以上乗らなければ効果なし
 自動車業界では“エコカー特需”への期待が高まっている。15兆円の景気対策では5万~25万円の補助があるし、4月1日に始まった「エコカー減税」と合わせればハイブリッド車は40万円も安くなる。業界はウハウハだがちょっと待って欲しい。ロコツな自動車業界支援だし、そもそもクルマを買い替えない国民には何のメリットもない対策だ。こんなものがまかり通っている理由はひとつ、エコカーなら環境に優しい。つまり、「国民全体に恩恵がある」という理屈だが、それもアヤシイのだ。ジャーナリストで「トヨタの正体」の著者の横田一氏はこう言う。「プリウスを例にとると、買った時点では地球に優しくありません。ハイブリッド・システムはエンジンに加えて電気モーターも積むから車体が重くなり、アルミなどで軽量化していますが、このアルミはつくるのに大量のエネルギーを消費するのです。プリウスの製造段階での環境負荷は、通常のガソリンエンジン車に比べて大きくなります。製造過程の環境問題が専門の東大大学院教授の木村文彦氏も講演で、『造るのに大量のエネルギーを消費しながら、日曜日しか乗らないハイブリッド車はムダだ』と指摘しています」 製造段階で環境に負荷がかかるハイブリッド車で、環境に好影響が出るのは、何年間も乗り続けた後なのだ。「3年間で1万キロしか走らないようでは、とても環境に優しいとはいえません。確かに燃費はいいから、長期間乗っていれば、ガソリン車よりも環境に優しくなる場合はありますが、特定の条件より走行距離が短いと、環境負荷はガソリン車より多くなるのです」(横田一氏=前出) プリウスはwebカタログで、「生産から廃棄までの全段階で排出するCO2 や大気汚染物質の総量を旧型車に比べて低減しています」と謳(うた)っているが、その条件は、「生涯走行距離10万キロ(10年)を、10.15モード(燃費測定の走行パターン)で走行した場合の結果」とある。ハイブリッド車を買って、10年10万キロ乗り続けるドライバーがどれだけいるか。 エコカー補助はやっぱり、業界へのバラマキだ。(日刊ゲンダイ2009年4月14日掲載)
個人的には、ハイブリッド車購入の補助も不況に当面している自動車業界への支援に決まっているし、先日始まった土日と祝日の高速道路料金の割引制度も支援の一環ではないか。自動車の利用頻度を高めて、むしろ環境の悪化を助長し温暖化対策を後退させるのではないか。景気の浮揚には、なりふり構わないというのであれば言うことはない。ただ首尾一貫した政策が欲しいものだ。

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