2009年4月9日木曜日






おや!?投資ファンドが優しく変身…強硬姿勢から一転

 どういう風の吹き回しか、「投資ファンド」が投資先企業に対し、給料引き上げなど従業員の待遇改善をブチ上げるようになってきた。これまでは、短期で利益を稼ごうとして、企業側に効率重視の経営を求めてきたのにである。180度の転身の背景には何があるのか-。 投資ファンドは、投資家から集めた資金で企業の株式などに投資し、配当や売却益を出資者に分配する。数年ほどの短期で利益を稼ぎ出そうとするため、経営陣に事業の効率化を強く迫ったり、自社株買いや増配など株主還元策を求めたりするファンドもあり、これらは「物言う株主」とも呼ばれている。 ところが、最近はその強硬姿勢を転換させているという。  独立系投資ファンドのいちごアセットマネジメント(東京都千代田区)は、高い株価を実現するために企業へ要求してきた自社株買いについて、取得した自社株を無償で従業員に割り当てることを提言。投資先の一部は前向きに検討しているという。【長期的価値重視】  1994年に来日し、日本通で知られる同ファンドのスコット・キャロン社長は「企業が長期的に成長するため、従業員に報いることが大事だ」と強調している。 米系投資ファンドのダルトン・インベストメンツ(東京都千代田区)は昨年11月、多額の資金を必要とする自社株買いそのものを当面、求めない方針を決定。収益悪化で投資先の資金の余力が乏しいとみて増配要求も見送り、委員会等設置会社への移行など企業統治の強化に交渉の重点を移すことにした。 米系投資ファンド、スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドも、自社株買いなどを求める姿勢を和らげている。 【背景に景気悪化】  投資ファンドが姿勢を転換している背景には、世界的な景気悪化が影を落としているようだ。 「景気悪化が深刻化し赤字転落企業が続出するなか、短期の利益を確保するために投資先企業に高配当や高い株価水準の維持を厳しく求めても、企業側が対応できないのが実情だ。そこでファンド側も、企業の持続性や社会的貢献など長期的な価値を重視する方向に戦略を転換している」(証券アナリスト) これまでは、ファンド側の要求を企業側が敵対視して衝突するケースが多かったが、日本プロクシーガバナンスの白井正巳・シニアアナリストは「今年は両者の関係が変わる転換点になる」と指摘する。 また、ファンド側が従業員寄りの運営を求め始めたことで、日本企業の経営方針にも今後影響を与える可能性がある。 (夕刊フジ)

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